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Det Skaldede spøgelse イェスパーと無垢の霊

デンマーク映画 (1992)

子供向きの映画ではあるが、その最大の魅力は、何と言っても主人公の11歳のイェスパーが あり得ないほど良い子なこと。死んだ祖父を愛し、祖父の飼っていた猫を愛し、芯から腐った “牧師のバカ息子” にどれほど嫌味を言われても、すぐに笑顔に戻る。イェスパーの空想の中で姿を見せる “無垢” という名の修道士は、無垢という点でイェスパーの化身とも言える。それほど無垢な存在だ。数多くの映画の中には、様々な少年が出て来るが、家族や学校での虐め、病気、あるいは、社会的差別や貧困に悩み、苦しむ姿が多い中で、どこまでも純真で、家族に愛され、女の子に愛され、最後はハッピーエンドで終わる幸せな少年の姿は、非現実的かもしれないが、こうした映画が1本ぐらいはあってもいいと思う。余談になるが、英語字幕に時々間違いがあり、DVDのデンマーク語字幕はSubRipで取得できなかったので、手打ちと辞書で正しい内容をつかんだ上で意訳した。

大好きだった祖父のアーロンが死に、老いた猫のプーストと、アーロンが大事にしていた変わった戸棚が残される。プーストは、野良猫みたいに神出鬼没という以外は普通の猫だが、戸棚は謎の存在で、現実と空想の橋渡し役でもある。祖父の住んでいた小屋の横には川が流れていて、その川が、中世に町をペストから救ったという伝説があり、その立役者の聖職者の名をもらったのが、アーロンの孫の11歳になるイェスパー。ごく普通の小柄な少年だが、祖父の死を心から悼み、残されたプーストを 文字通り “猫かわいがり” する。小さな町の小さな学校には、牧師の息子で、心の捻じれたモーリスという少年と、イェスパーのことが好きなベアトリスという少女がいる。モーリスは、心に穢れのないイェスパーを妬み、ことあるごとに嫌がらせをするが、イェスパーは何とも思わず(虐めっ子と虐められっ子の関係ではない)、何があっても明るく、気にせず、ひたすらプーストを可愛がって日々を送っているが、乗り越え難い悲しいことがあると、自らの化身のような老人が夢の中に出て来て、イェスパーの心の支えになってくれる。だから、中世の貴重な遺物も発見できたし、モーリスが溺れかかった時には全力で助けて感謝される。このような少年は、将来どんな人間になるのだろう? イェスパー役のヴィーベは、下に書いたように、“メディアおよび通信業界の同僚のための唯一の真の労働組合” のまとめ役となり、みんなに好かれていて、笑顔は子供時代と全く変わらない。イェスパーも、きっとそんな大人になるのだろう。

ベンヤミン・ローテンボルグ・ヴィーベ(Benjamin Rothenborg Vibe)は、1981年3月5日生まれ。子役としての主な出演作(脇役以上)は、『Den store badedag』(1991)、本作品、『Krummerne 3 - fars gode idé』(1994)の3作品。俳優を辞めた後は、色々な職に就き、現在は、業界誌Elektrikerenの記者、労働組合Dansk El-Forbundのコミュニケーション・マネージャー。何と言っても、その特徴は笑顔。下の写真の左は、『Den store badedag』の1コマ、中央はあらすじでは使わなかったこの映画の1コマ、右は現在の姿。いずれも、素敵な笑顔だ(特に、中央と右の類似に注目。11歳と40歳がこんなに似ているとは!)。

あらすじ

映画は、イェスパーが大好きだった祖父アーロンが死んだ場面から始まる。棺に納められたアーロンの前で、イェスパーは摘んできた黄色の花を持って、悲しそうにじっと立っている(1枚目の写真)。そして、おもむろに花をアーロンの “胸の上で組んだ両手” の上に置くと、「おじいちゃん」と声をかける(2枚目の写真)。「イェスパーだよ。お願いここにいてよ」。そして、タイトル。直訳は 「坊主頭の幻影」。これでは意味が分かりにくいので、意訳した。イェスパーは、川岸にある祖父の家から外に出て桟橋の上に立つ(3枚目の矢印)。
  
  
  

夜空を見上げて、「神様… イェスパーと言います。おじいちゃんを死なせないで。死んでるふりってことにできませんか?」とお願いするが、何も起きない(1枚目の写真)。そこで、大事にしているナイフを取り出すと、「これ、世界一のナイフです」と神に見せ(2枚目の写真)、「おじいちゃんが戻ってくるなら、これ あなたの “悪魔の爪”〔桟橋のすぐ下流にある “川から生えた木” のすぐそばにある ”何でも吸い込む” 危険な箇所〕に捧げます」と言って、川に投げ込む。すると、現実か幻か、木の向こうから何者かが小舟を漕いでやってくる(3枚目の写真)。「おじいちゃんなの?」。
  
  
  

その時、プースト(祖父の飼っていた老猫)が桟橋までやって来て 唸り声を上げ、イェスパーが猫を見て 「しーっ」と言って振り返ると、小舟の姿は消えていた。がっかりしたイェスパーが、プーストを抱き上げて家に戻ろうとすると、カラスがお大きな声で鳴いたので、びっくりして振り返る(1枚目の写真、矢印は猫)。家に戻ったイェスパーが、また棺の前で祖父を見ていると、母が 「少し寝てらっしゃい。おじいちゃんは、棺の中で安らかに眠ってるわ」と言い、父も 「母さんの言う通りだ」と言う(2枚目の写真、矢印は猫)。
  
  

翌朝になり、ドアが開き、①最低に腐った同級生モーリス、②息子の躾もできないクズ牧師、③新任のダメ教師シーグンハイの3人が入ってくる(1枚目の写真、矢印はモーリス)。牧師は、「新任のシーグンハイ先生が立ち寄られました。少し急がねばなりません」と説明する〔教師が付いてくるのは異常〕。イェスパーは、「やあ モーリス」と笑顔で声を掛けるが、プーストはモーリスに向かって唸り声を上げ、モーリスは醜い顔を歪めて 「アーロンの老いた淫売猫〔gamle horekat(old whore cat)〕」と言う〔この恥ずべき言葉は牧師にも聞こえているハズなのに、なぜ注意しないのだろう?〕。母が、「アーロンは、いつもお気に入りの棚と一緒に埋めて欲しいと言ってました」と言うと、この牧師は、過剰反応を見せる。「そんなことは許されない。邪悪な要望です。自分の所有物を墓地に持ち込むことなどもっての他。棺桶以外は許されません」と、強い言葉で否定する(2枚目の写真)〔物には言いようがある。最低の牧師〕。蓋が閉まる寸前、イェスパーが、「ストップ! おじいちゃん、死んでないかもしれない」と止める。牧師は無視して締めさせる。2人が棺を持ち上げると、中でガタガタ音がする。イェスパーが、「おじいちゃん!」と言って蓋を開けさせると、中にはプーストが潜り込んでいた。父は、猫を取り出すと、「今は、お前の物だ。おじいちゃんも それを望んでた」と言ってイェスパーに抱かせる(3枚目の写真)。イェスパーが、猫を抱いて外に出ると、棺が父のトラックの荷台に乗せられる。母は、イェスパーに学校に行くように言うが、デンマークでは、祖父の葬儀にも孫を出席させないのだろうか?
  
  
  

イェスパーはプーストと昨晩の出来事(夢)について話していて、学校へ行くのが遅れてしまい、「ここにいるんだよ」と言い残して、ショートカットの柵を乗り越えて校庭に入り(1枚目の写真)、授業中の教室に入って行くと、今朝会った教師から、「時計を持ってないのか?」と嫌味を言われる〔祖父の死の翌朝なのに、何という冷たい言い方〕。イェスパーが、「僕、おじいちゃんとプーストと一緒に…」と言いかけると(2枚目の写真)、教師は、「アーロンは死んでいる。遅刻を死者のせいにしないで。座りなさい」と冷たく命じる〔小学校の教師として失格〕。教師は、そのあとで、「魔女よ去れ、トロールよ去れ。それは、善から悪を除く時に、聖ヨハネに対し使う言葉です」と、授業を続ける。それを聞いたモーリスは手を上げ、「イェスパーは、今朝いいことをしました。だから遅れたのです。彼は、善から悪を除きました。淫売猫を溺れさせたのです」と言い(3枚目の写真)、イェスパーは、「嘘です!」と叫ぶ(4枚目の写真)〔ここでも、教師は、“淫売” という汚い言葉の使用を注意すらしない〕。代わりに話したことは、①真夏にはみんな川に行く、②泳げないと川は極めて危険。そして、何と、教壇の上で泳ぐ真似をし、他の生徒にも真似させる〔余程の変人〕。イェスパーは、川のそばに置いて来たプーストのことが心配になり、窓から外を見ると、プーストがゴミ箱を漁っている。モーリスは、授業があまりに下らないので、「僕は泳げるから」と近くの生徒達に嘘を付いて〔本当は、全く泳げない〕、さっさと出て行く。
  
  
  
  

しばらくすると、窓の外から、「淫売猫め!」というモーリスの声とともに、投げた石が鉄板に当たる音が聞こえてくる。心配になったイェスパーが窓まで行って覗くと、ゴミ箱の上にいたプーストに向かって石が何個も投げられている(1枚目の写真、矢印は石)。プーストは逃げ去り、それを柵まで追って行ったモーリスは、振り向いてイェスパーと目が合うと、舌を出す(2枚目の写真)。イェスパーは、すぐに教室から抜け出し、ゴミ箱を乗り越えてプーストが消えた方に向かって走って行く。そして、祖父アーロンの家まで行くと、ドアからプーストが出て来る。イェスパーは、プーストを抱き上げると、傷がないか調べる(3枚目の写真)。案の定、尻尾に傷があったので、葉っぱとクモの巣を使って手当てする。
  
  
  

すると、桟橋の岸近くで、1匹の魚が死んで浮いているのを見つけたので、可哀想に思ったイェスパーはそれを取り(1枚目の写真、矢印)、プーストにも見せる。「おじいちゃんみたいに、死んでる」。そう言うと、岸辺に穴を掘り、花を並べていざ埋めようとすると、プーストがほとんど食べてしまっている。イェスパーは、「お葬式で、死体を食べちゃった」と、プーストを責めると、魚を取り上げ、骨だけになった死骸を穴に入れると(2枚目の写真、矢印)、上から土を被せる。そして、両手を組むと、空を見上げ、「神様、僕とプーストは、泳ぐことができなくなった魚を埋葬しました。おじいちゃんのいる小川で、もう一度泳がせてあげてください。そして、僕とプーストが よろしくと言ってたと伝えてください。アーメン」と祈る(3枚目の写真)。
  
  
  

そこに父がやって来て、すべて片付けなければいけないので、大儀そうに家の中を見回す(1枚目の写真)。そして、入口に掛けてあった船員帽を取ると、イェスパーの頭に被せ、「これはお前が持ってろ。他の物と一緒に火に投げ込むには素敵過ぎる」と言う(2枚目の写真)。イェスパーはドアの反対側に置いてあった変わった棚に注目し、一番上に「アーロン」と彫ってあるのを手でなぞり(3枚目の写真)、「アーロンって、変わった名前だけど、これ、どこで手に入れたんだろう?」と父に訊く。父は、「人にはいろんな名前がある。家に帰ったら、お前の名前の由来を教えてやる」と言い、変わった棚については教えてくれない〔この棚が、母が、「アーロンは、いつもお気に入りの棚と一緒に埋めて欲しいと言ってました」と言っていた棚なのであろう〕
  
  
  

イェスパーが外に出て行くと、川の少し上流で、2人の同級生の女の子が水辺に仲良く立っている。イェスパーは2人の近くまで走って行くと、「今日は」と声をかけ、自慢するように、帽子に手を触れる。イェスパーと仲良しのベアトリスが、「面白いわね。それ、あなたの?」と訊く。「うん。前はおじいちゃんの物」。「ちょっとカッコいいわね」。もう一人の女の子がイェスパーから帽子を取ってベアトリスに被せ、「あなたの方が良く似合うわ」と言い、それを聞いたイェスパーは笑顔になる。「これって、ガールフレンドへのプレゼント?」。イェスパーが頷いたので、2人の女の子は嬉しそうに笑う。真面目な顔に戻ったベアトリスは、「ここに入るの危ない?」と訊く。「ここはいいけど、桟橋の向こうは危険だよ。“悪魔の爪” では命に係わるんだ。”爪” が渦に引き込むから。これまで、たくさん犠牲者が出てる」。そう言うと、長い草をちぎって自分の口に入れ、窒息するフリをして2人を楽しませる(1枚目の写真、矢印は帽子)。そこに、モーリスと、彼より体が大きいくせにモーリスの言いなりになっている情けないバカが いきなり飛び出て行くと、バカがベアトリスから帽子を奪い、それをモーリスに投げる。そして、帽子を奪おうとするイェスパーに、「イェスパーは、バカなイモムシだ」と言い(2枚目の写真、矢印は帽子)、体の大きなバカにイェスパーを動かないようにつかませ、「女の子にみせびらかすのは止めるんだな」と言うと、帽子を川に投げ込む〔これは、牧師の子にも関わらず 「第八戒: 汝、盗むなかれ」を破ったことになる〕。ベアトリスは、当然、「あんたって、何て嫌な奴なの」と批判する。イェスパーは “悪魔の爪” の手前にある “川の中に迫り出した枯れ木” の上を先端まで慎重に進んで行き、何とか帽子を取ろうと必死になるが(3枚目の写真、矢印は帽子)、届かないので川に飛び込む。“悪魔の爪” のことなど何も知らないし、自分では泳ぐことすらできないモーリスは、「自分で何とかしろよ」と言うだけ。結局、帽子は “悪魔の爪” に巻き込まれ、アーロンの貴重な遺品は失われる。それを見たモーリスは、「やればできたのに」と、責任転嫁する〔これほど嫌な登場人部は珍しいが、これは、いわゆる “虐め” とは少し違う。悪質な悪戯。そして、イェスパーはモーリスのことを怖っておらず、ただ嫌って無視している〕
  
  
  

イェスパーは、川の中で木に捉まりながら落胆していると、そこに、父がやって来て、もう一人の助けを借りて、アーロンの家から例の戸棚を運び出す。扱いやすくしようと、鍵のかかった扉を開けるため、びしょ濡れのイェスパーに 鍵を探しに行かせるが、空っぽになった小屋の中には〔戸棚が最後になった〕、鍵のある場所など どこにもない。ただ、壁に貼ってあったアーロンとプーストの古い写真だけは回収する。棚や、その他の物品を満載したトラックの中で、イェスパーは 「おじいちゃんは、死んだ時には鍵を持ってたんだよ。それとも、誰か知らない人が持ってるとか」と、父に話す。アーロンの家具類は、聖ヨハネの前夜祭に燃やすために一箇所にまとめて捨てられるが、例の戸棚だけは、「誰かが使える」という理由で、荷台に乗せたままにし、助っ人と別れる。イェスパーは、「名前の由来を教えてやる」と言った父の約束を守るようせがむ。イェスパーは猫を運転席に残し、父と一緒に教会に入って行く。教会の天井は白地にユニークな絵が描かれているが、これはデンマークの特定の地域での見られるユニークな後期ロマネスクの天井画。映画の映像では分かりにくいので、1枚目には、コペンハーゲンのあるシェラン島の南にあるファルスター島にある小さなオーストップ〔Åstrup〕の教会堂の天井画(私の撮影)を示す。父は、壁に埋め込まれた石碑の文字をイェスパーに読んで聞かせる。石碑には、見知らぬ聖職者がペスト〔soten〕に襲われかけた町〔この教会のある町〕にやって来た。その聖職者の名前はイェスパー〔Jasper〕で、彼は川の流れでペストを止め、教区を救ったというようなことが書かれていた(2枚目の写真、下線はイェスパー)。自分の名前の由来が素晴らしいことを訊き、イェスパーは幸せになる(3枚目の写真)。帰りのトラックの中で、イェスパーは、「“soten〔現代語では煤という意味しかない〕” ってどういうこと?」と父に尋ねる。「古ノルド語でペストという怖い病気のことだ。そして、悪は川で止められた。分かるな?」。「ううん、あんまり」。そして、辺りが真っ暗になった頃、アーロンの棚だけ乗せたトラックは、イェスパーの家に着く(4枚目の写真、矢印)。
  
  
  
  

母が、イェスパーをタライの上に立たせ〔この家には風呂がない〕、体をきれいに洗って拭きながら、「桟橋の下流に行っちゃダメよ。“悪魔の爪” に連れて行かれたらどうするの?」と注意する(1枚目の写真)。イェスパーは、「プーストがケガした」と言うと、母は、「あの猫はどこかおかしいから、自分でやったのよ。プーストは放蕩猫だから、町中の子猫のパパよ」。「プーストはおじいちゃんがいなくて寂しいんだ」。それを聞いた母は、息子の気分を変えようと、タライから出て、パジャマのズボンを履き始めたイェスパーに、「今からくすぐっちゃうから」と言って、2人でふざけ始める。イェスパーは母にタワシを投げつけ、母は、そのタワシを掴んで、投げようとしたので、イェスパーは両手で顔を覆う(2枚目の写真、矢印はタワシ)。この “お遊び” のあと、イェスパーはプーストを抱いて2階にある自分の部屋に行き、そのまま窓辺に座る。「おじいちゃんがいなくて寂しいんだろ? 僕もそうだ。だけど、一人じゃないから心強い。いてくれて嬉しいよ。おじいちゃんは “見知らぬ人” たちと一緒にいるんだ。それとも、たくさんの星の中のどれか一つかな」(3枚目の写真)。
  
  
  

ハンモックに入ると、イェスパーは、アーロンの家から持って来た写真を壁に貼り付ける(1枚目の写真、矢印)。そして、眠ろうとすると、プーストが唸り声を上げたので、牧師館には近づかないようにと注意してから、窓を開けて外に出してやる。すると、鍵がなくて開かなかった棚の扉がゆっくりと開くのが見える(2枚目の写真、矢印)〔幻覚の可能性〕。そして、扉はすぐにまた閉まる。びっくりしたイェスパーは、屋根裏部屋から梯子を入りて両親の寝室に飛び込むと、2人は布団をかぶって愛し合っている真っ最中。イェスパーが、「父さん、眠ってるの?!」と大きな声で呼ぶと、2人は顔を出し、母が 「なぜまだ起きてるの?」と訊く。「外に誰かいるよ」。仕方がないので、父がベッドから出て、イェスパーと一緒に外に出て行く。イェスパーがトラックの荷台を見ると、また 扉が少し開いたので、荷台に上がって開けようとすると、その前に閉まってしまう。そこで、開けようとするのだが、開かない。それを見た父は、「あきらめろ。鍵がないじゃないか。行くぞ」と言い、イェスパーが、「でも、父さん」と、扉を指差し(3枚目の写真)、扉が開いて閉まったと言おうとするが、父はもううんざりしているので聞く耳を持たない。父に連れられてドアに入る時、イェスパーが振り返ると、トラックの向こうに修道士の衣をまとった何者かが去って行くのが見える(4枚目の写真、矢印)〔幻覚の可能性〕
  
  
  
  

翌日の授業で、イェスパーは、「僕の名前がどこから来たのか分かりました。教会の石に刻まれていたので、とても古い名前です。僕の父さんが教えてくれました」。ここで、モーリスが、「今日のニュース。彼の父さんは読めるんだ」と嫌味を言う〔ダメ教師は注意しない〕。それに構わず、イェスパーは、「石は教会にありますから、見てみてください。『その聖職者の名前はイェスパーという名であった』と彫ってあります。どこからやって来たのかは誰も知りません」(1枚目の写真)。モーリスは 「そいつの名がイェスパーなら、まぬけの国から来たんだ」と ひどい発言。教師は、ようやく 「モーリス、授業中、そんな発言は止めるんだ!」と叱った後で、「イェスパー、分かって良かったな。石に刻まれた人は賢明だった。いつか教会に行って見てみよう」と言う。それに対し、モーリスが 「もし、そいつがそんなに賢明だったら、イェスパーなんて名前にはしなかった」と言い、「発言するときは、手を上げるんだ」と叱られ、ムッとする(2枚目の写真)〔本当に嫌な顔〕。その時、窓の外から車のクラクションが聞こえ、イェスパーは 「父さんだ」と言って窓のところまで走って行く。教師は 「イェスパー、席に戻るんだ」と言うが、イェスパーは 「父さんが来ました」と言い、同時に終業のベルが鳴る。イェスパーが真っ先に玄関から飛び出て来ると、そこでは、父と母がアーロンの棚をトラックから降ろしていた(3枚目の写真)。それを見に来た教師に、母は町からはすべて燃やすよう言われたが、この棚は燃やすには素敵すぎるので、学校に置いてはどうかと思い 持って来たと説明する。イェスパーは、「前はおじいちゃんが持っていましたが、今は “見知らぬ人” が中に住んでます。だから、学校に置いておかないと」と言い、両親は校舎内に運び入れようとするが、そこでモーリスが口を出す。そして、「他の誰かが望んでいるかも。僕の父さんが」と平気で嘘を付く(4枚目の写真)。教師が、「牧師さんは、本当にそう言ったのか?」と訊いても、「僕が聞きました」と嘘を重ねる。「彼が興味を持っているなら、牧師館に行くべきだ」。
  
  
  
  

3人を乗せたトラックは、牧師館の前の大きな砂利広場で昼食を取っている牧師と妻と ろくでなしのモーリスの近くに停まり、モーリスの言葉を信じていたイェスパーの母と父は、「気に入って頂ければ幸いです」。「これは有名な棚です」と言うが、モーリスの不快さの遺伝的要因でもある “牧師の妻” は、「こんな不潔でおぞましい物が、なぜここにあるの」と夫に訊く(1枚目の写真)〔物には言いようがある。なんと失礼な〕。牧師は 「骨董品だ。掃除が必要だがな」と言うと、中が見たいと言い出す。「鍵はどこだね?」。「それが、見つからないんです」。“牧師の妻” は、誰にも相談せず、「持ち帰って」と命令するように言う〔如何にも モーリスの母らしい〕。その頃、モーリスは、食事の皿の中からソーセージを1本取り出して、プーストに食べさせようとする(2枚目の写真、矢印)。それを見たイェスパーは、「プースト!」と注意し、猫は食べずに逃げ出し、当てが外れたモーリスは、ソーセージを地面に投げ捨てる。そして、母に向かって 「淫売猫が、僕らの食べ物を盗ってった」と嘘の告発。何度も書くが、“horekat” の英訳は “whore cat”。WhoreはNGワードだが、デンマークでは平気に使っていいのだろか? “牧師の妻” がそれを聞いても息子を批判もせず、逆に、イェスパーの両親に向かって、「その不潔な猫を連れて出てって!」と強く言う〔何という傲慢で唾棄すべき女性。たかが小さな町の牧師の妻だというのに、何様だと思っているのだろう?〕。牧師も、「あなたは鍵のかかった棚を持って来たが、そんな物には何の価値もありませんぞ」と言い残して、さっさと牧師館に入って行く(3枚目の写真)〔牧師には不適格な冷たい男〕。結局、アーロンの棚は、家に持って帰ることに。
  
  
  

3人がトラックに乗っている間、イェスパーは いなくなったプーストのことを心配していたが、猫は、半分食べたソーセージと一緒に、家の前のテーブルに置かれた “無人販売” の各種ビン詰の横に座っていた。イェスパーは、さっそく、愛しげにプーストを抱き締める(1枚目の写真)。母は、食べ残しのソーセージを見て、家に入ると、ソーセージ1本を紙に包み、「牧師さんに借金したくないから、新鮮なソーセージを渡してらっしゃい」と言って、イェスパーに渡す。イェスパーは、歩きながら ソーセージを渡す時の言葉を考えながら牧師館の前に着くが、気が乗らなかったので、向かい側にある教会の墓地に入って行く。そして、通路で花を摘むと、アーロンの墓の前まで行き、芝生を少し掘り起こして穴を開け、その周りに黄色の花を置くと(2枚目の写真、矢印はソーセージ)、穴に向かって話しかける。「おじいちゃん、イェスパーだよ。寂しいよ。聞こえる? プーストのことも話さないと。あいつは、唸り声を出したり、不満を言ったり、自分勝手なことばかりするんだ。責任取るの大変だよ。みんな、プーストがソーセージ盗んだと思ってるけど…」。眠くなったイェスパーは、そのまま暗くなるまで寝てしまう(3枚目の写真、矢印はソーセージ)。
  
  
  

真っ暗な墓地で目を覚ましたイェスパーは、芝生を元に戻すと、ソーセージを持って牧師館まで行くと、鉄柵の門を何とか押して開け、玄関の階段の上にソーセージを置く。そのまま帰ろうとすると、あまりにも偶然だがドアが開き、モーリスが顔を出す。「よお、イモムシ・イェスパーじゃないか」。「母さんが、ソーセージを持って行けって。だけど、プーストを誘惑したのは君だ」。「あいつは淫売猫だ。すぐポックリだ。知ってるだろ」。怒ったイェスパーは門に向かって走り出す。モーリスは、門まで来ると、「ウチじゃ猫の肉なんか食べないぞ、赤ん坊イェスパー。女の子と泳ぎに行って、ちっちゃなイモムシでも見せるんだな」と侮辱し(1枚目の写真、矢印はソーセージ)、手に持ったソーセージを投げつける。モーリスが去り、ハッとして振り向くと、修道僧がソーセージの手前を横切って行き(2枚目の写真、矢印はソーセージ)、通り過ぎると、拾った訳でもないのに、ソーセージがなくなっている〔幻覚の可能性〕。恐ろしくなったイェスパーに後ろから何かがぶつかり、悲鳴をあげて振り返ると、そこには、心配して見に来た母がいた。「イェスパー、どうしたの?」。「何も、家に帰ろうよ」。母は、イェスパーの頬に優しく手を当て(3枚目の写真)、抱き締める。
  
  
  

その晩、イェスパーがハンモックで眠っていると、プーストが唸り声を上げたので目が覚める。プーストを外に出そうと窓を開けると、修道僧がやって来るのが見える(1枚目の写真)〔幻覚の可能性〕。そこで、この前の時のように急いで梯子を降りるが、父を起こしても役に立たないので、そのまま外に出て、トラックの荷台に上がる。良く見ると、アーロンの戸棚のドアの下から、修道僧の衣の裾が出ている。そこで、それを引っ張ってみるが、相手の方が力が強いので、中に入って行ってしまう〔幻覚の可能性〕。その時、下の砂利の上にいたプーストが唸り声をあげて、向こうに行き、その後に光る物が残されていた。イェスパーは、すぐに荷台から降りて、銀色の物を拾う(3枚目の写真、矢印)。これは、後で、上質なデンマーク・シルバーでできた中世の靴の留め金だと分かる。
  
  
  

翌日は、湖で水泳の授業。イェスパーは、昨夜拾った物を持っていって自慢する。イェスパーが好きなベアトリスは、「あなたには、面白いことがいっぱい起きるのね」と称賛。モーリスの手下のバカは、「古いガラクタだ」と貶すが、イェスパーは、「“見知らぬ人” からの啓示かも」と言う(1枚目の写真、矢印)。モーリスは、水泳の時間なのに、泳げないので、理由をかこつけて服を着たまま。そして、「自慢と嘘だ」と言うが、この2人の蔑みは、誰も聞いていない。そこに、教師が 「泳ぎに行くぞ」とやって来る。モーリスの手下が、「イェスパーが見つけた物を見てください。彼は、“見知らぬ人” からの啓示だなんて言ってます」と、銀色のものを見せる。イェスパーが、「先生、それは何ですか?」と訊くと、教師は 「純銀。古代の遺物。ダネファエ〔danefæ〕(発掘された文化的価値のある遺物)だ」言い、取り敢えずポケットに入れ、後で博物館に行って訊いてみると話す。一方、ガラクタが古代の遺物となったことで面白くないモーリスは、持って来たノートに手紙を書くと、折り畳んでイェスパーの水泳パンツに押し込む(2枚目の写真)。みんながいなくなると、イェスパーはすぐに手紙を読む。そこには、「世界で最も醜く、凶悪な野良猫に恐ろしい死を宣告。淫売猫の命が大事なら、真夜中に教会に来い」と書かれてあった〔牧師ではなく悪魔の餓鬼だ。もっとも、父も牧師失格だが〕。イェスパーは授業なんか放り出して、プーストを探し回る。家まで戻って来ると、ちょうど教師が、湖に残してきたイェスパーの鞄と服を返しに来ていた〔教師はプリプリ怒って帰って行ったが、授業中に生徒が行方不明になったら、探すのが教師の義務ではないのか?〕。母は、夫に、「あの子を責めないで。きっと、私たちが知らないことが何かあるのよ」と、寛容なところを見せる。そこに、イェスパーが姿を見せて、「おじいちゃんの戸棚、どうするの?」と訊く。父:「ここに置いておく」。母:「誰も欲しがらないから」。イェスパー:「プーストが行っちゃった」。父:「いつもうろつき回ってるだろ」。イェスパー:「牧師館に監禁されてる」。父:「監禁?」。「そう、監禁」〔なぜ、モーリスの邪悪さを告発するため、手紙を見せないのだろう?〕。この後で、アーロンの戸棚は、もう一度桟橋に戻される。
  
  
  

夜になり、イェスパーは、外出着を着たまま、手紙を見ながら真夜中まで待ち(1枚目の写真)、見つかるといけないので窓からロープを伝って外に出て行くと、プーストを入れる袋を持って教会に直行する。急に雨が降り出し、イェスパーはずぶ濡れになって教会に入り、懐中電灯であちこち探す(2枚目の写真)。そして、イェスパーの名前のある石碑のすぐ脇にあるオイルヒーターに有刺鉄線が絡まっていて、その刺の部分に、プーストの毛が一杯ついていた(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

毛の付いた有刺鉄線の一部を折り取ったイェスパーは、「モーリスに報いを受けさせる」と誓う。そして、教会から出て行こうとして振り返ると、そこには、舞台演出のスモークのようなものの中に、修道僧が立ってイェスパーを見ていた(1枚目の写真) 。イェスパーが、「プースト見たことありますか? おじいちゃんのアーロンの猫でした。僕が世話をしてたんだけど、モーリスがプーストを傷付けました」と言い、毛の付いた有刺鉄線を見せる(2枚目の写真、矢印は毛)。「モーリスには報いを受けさせます」。すると、初めて修道僧が口をきく。「そなたが怒るのは分かる。だが、復讐は答えにはならぬ」。2人は、夜道をイェスパーの家に向かって歩く。「僕、イェスパーです」(3枚目の写真)。「珍しい花の名前じゃな」〔右の写真は、クリスマスローズの一種のJasper〕。「それとも、聖職者かも」。「それもじゃ」〔すべて幻覚の可能性〕
  
  
  

桟橋のアーロンの戸棚の中に入った2人。丸坊主の頭の老人は、頭巾を取ると、イェスパーに、さっき話したことをもう一度言い直す。「復讐を求めても、それは決して良いことにならぬ」。「だけど、モーリスの仕打ち、見てよ!」(1枚目の写真、矢印は有刺鉄線)。「復讐は復讐を呼び、悪はなくならぬ。悪と戦う唯一の途は、善で対処することじゃ」。イェスパーは、「あなたは誰なの?」と尋ねる。「わしの名は “無垢” じゃ」。「むく?」。「無邪気なのじゃ」。「だから、頭に毛が無いのですか?」。それを聞いた老人は笑顔になり(2枚目の写真)、「触ってみなさい」と、頭を下げる。「あなたは “見知らぬ人” の1人ですよね? おじいちゃんのアーロンを知ってるんでしょ?」。「そなたは、アーロンの友だったのか?」。「はい。今、プーストには、僕しかいません」。そう言って、プーストを抱き締める。そして、ハンモックでプーストと一緒に寝ているイェスパーの映像に切り替わる(3枚目の写真)〔すべて幻覚の可能性〕。イェスパーは母に起こされ、プーストに熱があることに気付く。そこで、わざわざアーロンの戸棚まで行って扉をノックするが応答はない。
  
  
  

アーロンの戸棚のある桟橋の近くでは、ベアトリスと友達の女の子が2人で水着姿で川の中で遊んでいる。2人とも、パンツだけで胸は剥き出しなので、イェスパーは茂みに隠れて見ているが、見つかってしまう。「度胸があるなら、いらっしゃいよ」と言われ、茂みから出て行き、水泳パンツだけになって川に入る(1枚目の写真)。最初は、水に潜ってベアトリスのそばまで行ってカエルの真似をしてふざける。それを見たもう1人の女の子が、今度は私の番と言いだし、桟橋まで潜って泳いで行くよう煽る。イェスパーは、言われた通りに潜って桟橋まで着くが、上に上がろうとして板に手をかけると、その手をモーリスが靴で踏む〔どうして、モーリスがこんな所にいるのだろう? 全く不自然で、“結果ありき” のずさんな脚本だ〕。イェスパーは、痛さに顔が歪む(2枚目の写真)。「イモムシ・イェスパー、楽しんでるか?」。「放せ!」。「そんなに、女の子に注目してもらいたいのか? 女の子の尻を追いかけることしかしない!」。モーリスは踏むのを止め、イェスパーは桟橋から離れるが、モーリスは外れていた桟橋の板をイェスパーに向かって投げつける。これで、泳ぎのバランスを崩したイェスパーは 下流に向かって流され、そこには “悪魔の爪” が待っている。服を着て駆け付けた女の子2人は 「モーリス、あんた、気が狂ったの? すごく危険なのよ!」と強く批判し、ベアトリスは “悪魔の爪” の手前の木に向かって走る。しかし、イェスパーは木をつかめずに “悪魔の爪” に引き込まれる(3枚目の写真)。ベアトリスは 「溺れちゃう」と心配する。
  
  
  

その先、イェスパーは、川の中で 彼を吸い込もうとする危険な水流に翻弄されるシーンが続く。しかし、突然、イェスパーの目には、ボートに乗って助けに来たアーロンが見え、幸せそうな顔になる(1枚目の写真)。そして、水面から救いの手が突っ込まれ、それをイェスパーが握る。その次のシーンでは、いきなり夜になっていて、修道僧のボートにイェスパーが乗っている(2枚目の写真)。そして、桟橋にあるアーロンの戸棚が映る。イェスパーは、修道士に抱かれる形で、アーロンの戸棚の中にいる。修道士は、「そなたは、経験すべき良いことがたくさんあり、他の人に与える喜びもある。そして、老いて病気になると、解放者として死が訪れる」と諭す(3枚目の写真)〔これらは すべて幻覚で、イェスパーは “悪魔の爪” に巻き込まれても、気を失ったまま運良く岸に打ち上げられ、そのまま夜まで気を失っていた後で、自力で桟橋のアーロンの戸棚まで行ったとも解釈できる〕
  
  
  

その頃、川原では、大勢の町の人々が、懐中電灯を持ち、イェスパーを探している(1枚目の写真)。イェスパーがアーロンの戸棚から外に出ると(2枚目の写真)、その姿を真っ先にベアトリスが見つけて笑顔になり、その直後に母が飛んできて、「あなたが溺れたと思って、ものすごく心配したわ」と言って抱き締める(3枚目の写真)。父は、協力してくれた人々に、無事だったからと言って感謝する〔これだけの捜索が行われる前提として、普通なら、モーリスのせいでこうなったとベアトリスが発言すべきなのに(単なる悪戯を通り越した、未必の故意による殺人行為なので)、それが行われていないのは、あまりにも奇妙〕
  
  
  

翌朝、イェスパーが、“無人販売” のテーブルのところで 弱ったプーストを抱いていると、父と、いつもの助っ人が、「多分、私たちで助けてあげられるかもな」と言い、イェスパーは笑顔になる(1枚目の写真)。しかし、その方法は、助っ人によれば、「俺たちは、猫を眠らせられる。あっという間だ」と言い、首を捻って殺す仕草を手でしてみせる。部屋に戻ったイェスパーは、「誰にも、眠らせないからな」と、プーストに話しかける。そのあとで、イェスパーは、プーストを袋に入れて、アーロンの墓まで連れて行く。そして、木の十字架にもたれると、「おじいちゃん、イェスパーだよ。問題が起きちゃった。そう、プーストのことだよ。死んじゃったから 何もできないとは思うけど、教えてあげなくちゃと思って」と、猫が弱っていることを報告する(2枚目の写真)。イェスパーは、今度は、桟橋まで行き、アーロンの戸棚に向かって。「“むく” さん。プーストは病気です。“むく” さん」と言って、何度も手を上げると、初めて扉が自動的に開く。それを見たイェスパーは、「見ろよ、プルースト。やったぞ!」と喜び、天を仰ぐ(3枚目の写真)。
  
  
  

扉は開いたものの、中は空〔何度も動かして鍵が壊れた。それが現実かも〕。そこで、イェスパーは、プーストを抱いたまま、“無垢” が現われるのを待っているが、そのうちに眠ってしまう(1枚目の写真)。すると、いきなり凄い音と共に戸棚全体が揺れる。イェスパーが慌てて外に逃げ出すと、父が斧で戸棚の頂部を壊し始めていた(2枚目の写真、矢印)。「どうやって中に入ったんだ?」。「自然に開いたんだ」。「父さんを怖がらせるなよ」。「プーストはどうなるの? いつ死ぬかは、プーストに決める権利があるよ」。「もちろんだとも」(3枚目の写真)。
  
  
  

翌朝は、クラスで地元の資料館に見学に行く日。一行はちょうどイェスパーの家の前を通るので、イェスパーはそこから参加する(1枚目の写真)。イェスパーとベアトリスが最後尾を仲良く走っていると、殺人未遂をやってもまだ懲りないモーリスが、わざと自転車を路肩に停めて、2人の後ろに行く(2枚目の写真、矢印)。そして、後ろから接近すると、イェスパーの自転車にぶつけて倒し、並走していたベアトリアも一緒に路肩の下に転落する(3枚目の写真)。音で気付いた教師と生徒達が見に来ると、モーリスは、「見て、2人でいちゃいちゃしてる」と告げ口(4枚目の写真)。教師は、「イェスパーとベアトリス! なぜ、地面に転がってるんだ?」と訊くが、2人は、この結果が嬉しいので、モーリスのせいだと告発せず、ただ笑っている。
  
  
  
  

博物館では、学芸員が町における川の意義について話した後、中世のコーナーへと移動する。後に残った生徒達に、モーリスは、「おいイモムシ・イェスパー、お前の下らない栓抜き〔モーリスは、イェスパーが湖で見つけた純銀の遺物を、栓抜きだと決めつけている〕のせいで、こんな下らない博物館まで連れて来られて、ばあさんのたわごとまで聞かされるんだぞ」と、嫌味を言う(1枚目の写真)〔芯から腐ったクソガキ〕。ベアトリスは 「あんた、嫉妬してるのよ」と批判する。モーリスは、「ただの栓抜きだ。帰りにイェスパーは川に入るんだな」と言い出し、もう1人の女の子は、その発言を捕えて、「もし、あれが、ほんとの古代の遺物だったら、あんたが川に入るのよ。いいわね、モーリス?」と詰め寄る。モーリスの手下は、彼が泳げないとは知らないので、「賭けだ」と言ってしまう。モーリスは、それを受けて、「イモムシ・イェスパーが洗礼を受けるのが楽しみだな」と減らず口をたたく。中世のコーナーには、“無垢” が着ていたのと同じ修道士の衣と頭巾が展示してある。そして、学芸員の女性は、「天気の悪い時に守ってくれる大きな頭巾を見て下さい。足には、簡素な手作りのサンダルを履いています。そして、これが中世の靴の留め金。上質なデンマーク・シルバー製です」(2枚目の写真、矢印)「誰が見つけたのです? これは本当の宝物の発見ですよ!」と絶賛する。ベアトリスは 「イェスパーが見つけました」と言って、指差す。学芸員は、博物館からの感謝だと言って プレゼントを渡す(3枚目の写真、矢印)。さっそく中を見てみると、それは、映画の冒頭で、イェスパーが 「これ、世界一のナイフです」と言って “悪魔の爪” に投げ込んだナイフだった〔博物館は、どうやって手に入れたのだろう?〕〔イェスパーには嬉しくても、一般的な感謝の品としては 異常なのでは?〕
  
  
  

授業が終わった後、生徒達はモーリスを桟橋まで連れて行き、先端に立たせる。そして、“賭け” を武器にした女の子が、音頭を取って、全員に「モーリス、飛び込め!」と何度も言わせ、そのうち、誰かが、根の付いた草の塊をモーリスに向かって投げる。バカな手下が助けようとするが、バランスを崩したモーリスは、川に転落する(2枚目の写真)。イェスパーと一緒に話し合いながらやってきた教師は、それを見て、桟橋に駆け寄る。モーリスは、「僕、泳げないよ!」と必死に叫ぶ〔生徒達は、それまで嘘を信じて、彼は泳げると思っていた〕。それを見たイェスパーは、下流に向かって走って行き、“悪魔の爪” の手前にある木〔半分水中に没している〕の上を、危険を承知でモーリスに近付いて行く(3枚目の写真)。そして、モーリスのつかまっている枝まで到達するが、彼の着ているシャツが水中で何ヶ所か枝に引っ掛かって動かない。そこで、博物館でもらったナイフを取り出し、水中に手を伸ばして、シャツを切る。教師の方は、生徒達に “救助用の半円形に曲げた枝” を先端に付けた長い棒をイェスパーまで伸ばし、それをつかんだイェスパーは、輪をモーリスの体に掛ける。後は、生徒全員で引っ張り、モーリスを岸まで引き寄せる。救助が終わった後、取り残されたイェスパーを救おうと、ベアトリスともう一人が同じ棒を持って近づいて行く。イェスパーは、全然怖くないので、受け取った棒の先端で遊んで2人を笑わせる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

その夜、イェスパーが桟橋で仰向けに横たわり、お気に入りのナイフをみていると、”無垢” がボートを漕いで、“悪魔の爪” の向こうからやって来る。イェスパーは、立ち上がると、「“むく” さん」 と声をかける(1枚目の写真)。”無垢” のボートは桟橋のすぐ横を通って行くが、”無垢” の首には、襟巻にようにプーストの死体がかかっている(2枚目の写真、矢印)。「わしらは、これから旅に出るのじゃ、イェスパー。時が来た」。「最初はおじいちゃん… 今度は、あなたとプースト。こうしないとダメなのですか? “見知らぬ人” たちのところに戻るんでしょ?」。「友よ、わしらは、皆、永遠の一部に過ぎぬのじゃ」。「よい旅を、“むく” さん。おじいちゃんによろしく。プースト、お願いね」。「さらばじゃ、イェスパー。そなたを誇りに思う」。そして、”無垢” は上流へと消えて行く(3枚目の写真)〔すべて幻覚の可能性〕。そこに、両親が迎えに来る。聖ヨハネの前夜祭での火祭りに参加するためだ。
  
  
  

火祭りで燃やされる物の中心的存在は アーロンの戸棚だ。火が点けられると、牧師が “善の力を象徴する篝火(かがりび)の炎” についての長々とした言葉を続け、ようやく終わると、最後に、「私たちの中に、今日、偉大な行為を行い、息子のモーリスを災いから救ってくれた人がいます。家具運搬業者のイェスパーです」〔彼は、“Flyttemandens Jesper” としか言わない。①これだと、イェスパーが家具運搬業者のように聞こえる、②わざわざ父の職業など言わずに、姓をなぜ言わないのか? ③これまでの牧師の言動から見て “牧師は家具運搬業者より偉い” という差別意識があるのでは?〕「だから、妻と私は、彼に贈り物をしたいと思います」。その言葉を受けて、母親は、ずっと持っていたバスケットをモーリスに渡す(1目の写真、矢印)。モーリスは、神妙な顔でバスケットを渡すと、肩をすくめる。肩をすくめる時の意味は、「仕方ない」など、あきらめを現わすものとされるが、この時は、そのあとに、微笑むので、こえまでの自分を恥じたサインなのかも? イェスパーは、もちろん、笑顔で応える。生徒達による讃美歌の合唱が始まると、母が、中を見るように勧める。イェスパーが籠の蓋を開けると、中には子猫が入っていたので大喜び。以前、母が 「プーストは放蕩猫だから、町中の子猫のパパよ」と言ったので、イェスパーは 「きっとプーストの子だね。誇りに思わなきゃ」と、子猫に語りかける。そして、すぐ近くの川の水で洗礼を施す(2枚目の写真。矢印は子猫)。映画は、ベアトリスが寄って来て、キスするところで終わる(3枚目の写真)。
  
  
  

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